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やあ、こんにちは! 久しぶりだねえ。
三日も空けて何してたんだ、って?
いやー、僕もね。結構忙しくしてたんだよ。
ダンジョンに行ったり、
公式ファンアートにあられもない姿をさらされたりね!(アッー
さて、今日は吟遊詩人らしく、あるお話をしようと思うんだ。
と言っても、そんなに期待しないでもらいたい。
このお話の主人公は僕だから。
僕がどうしてエリンで吟遊詩人になったのか、また、どうして月笛と名乗るようになったのか。それを話してみようと思う。
これはそう、僕が『月笛』になる前の物語だ。
片田舎で細々と生計を立てる農夫の三男坊、それが元々の僕だった。
父さん、母さん、二人の兄さんと一人の妹の六人暮らしでね。貧しかったから、両親はもちろん、上の兄さんも、起きてる間はずっと働き通しだった。
僕も、物心ついた頃にはもう家の仕事を手伝ってたな。さすがに力仕事は無理だったから、主に妹のお守りとか牛追いなんかだったけどね。それでも幼い僕には大変な仕事だったよ。牛も妹も、僕の言うことなんて全然聞こうとしなかったから。
一日の終わりには、母さんの作る熱々のシチューをみんなで食べ、父さんから少しずつ読み書きと簡単な算術を教わるのが常だった。
下のモント兄さんとは二つ違いで、しょっちゅうケンカしてた。何でケンカになったのかよくわからないことも多かったな。
でも、狭い家だったからさ。すぐに父さんか上の兄さんがやってきて「やかましいっ!」って一喝。で、仲良く拳骨を一発ずつ頂戴してね。一緒にわんわん泣くんだ。
そうして一緒のベッドで眠れば、次の日にはもうケロッとしててさ。二人でくだらないイタズラを企んでは、また仲良く拳骨を喰らってた。
ケンカするほど仲がいいっていう言葉があるけど、実に僕らにぴったりあてはまる言葉だったと思う。
慣習に倣えば、上の兄さんがこの家を継ぎ、モント兄さんと僕はいずれどこかの職人のところへ奉公に出される。そしてゆくゆくは独り立ちして実家の近くに戻り、所帯を持つ。
何事もなければ、そうなるはずだった。
☆
僕が十歳の誕生日を迎えた初夏のある日。
牛達を村の外れの草原に放してやって、僕は妹と二人で近くの柵の上に腰掛け、草笛を鳴らして遊んでたんだ。
上手く鳴らせないと昨日まで癇癪を起こしていた妹も、その日やっとできるようになってね。すっかりご機嫌で、景気よく鳴らしてた。
元々草笛が得意だった僕も、音階を変えたり、節や強弱を付けたりすると妹が笑い転げるもんだから、調子に乗って随分派手に鳴らしてたと思う。
「上手だねえ」
笑いを含んだ声に振り向くと、薄汚れた茶色のローブを着た旅人がそこにいた。
「だ、誰?」
「ん? あ、驚かせちゃった? ごめんごめん。でも街道までいい音が聞こえてきたもんだからさあ」
「だからっ、あんた誰?」
警戒心をむき出しにした僕に、旅人は肩をすくめて苦笑した。
「人さらいでも追いはぎでもないから安心してよ。ほら、僕は吟遊詩人だよ」
そう言うと、旅人はフードを払った。艶やかな長いプラチナブロンドを丁寧に編み込んだ、端正な顔立ちの男の人だった。彼はその手で背中に背負っていた物を僕らに見せてくれた。
「これ、何?」
怪訝な顔で尋ねた僕に、彼は困ったように笑った。
「あれ、知らない? これはリュートっていう楽器だよ。こうやって音を出すんだ」
長い指が弦の上を踊り、初夏の日差しに似合う明るい音の粒を弾き出す。目を丸くしている僕らの前で、こうして即席の演奏会が始まった。
日々の暮らしで精一杯だった僕の世界に、音楽という新しい風が吹き込んだのは、まさにこの瞬間だったんだ。
夕方になって牛を小屋に戻す時が来るまで、僕らは彼の演奏に夢中になって、何度も「もっと弾いて!」とせがんだ。
「本当はタダで演奏はしないんだよ」
と彼は笑いながら、僕らのワガママに何度でも応えてくれた。
その後、吟遊詩人を小さな宿屋に案内し、翌日の夜には家族総出で彼の演奏を聴きに行った。大きな街道から外れたこの村に吟遊詩人が来るのはとても珍しくて、村中の人がわずかな娯楽を求めて酒場に集ったんだ。しまいには収容しきれなくなって、急遽全員広場に移動したくらいだった。
あれは本当にお祭りみたいだったな。みんなで薪や食事を持ち寄って、広場の真ん中に大きな篝火をたいてさ。村中が浮かれてたよ。ケチで有名な雑貨屋の親父まで、機嫌良く何杯もエールをおかわりしたりしててね。
もちろん、一番夢中になったのは僕だったよ。ローブを脱いできちんと身形を整えた吟遊詩人は本当にかっこよかったし、朗々とした歌声には圧倒された。何よりも、たった数本の弦からあれほど複雑な旋律が生まれることに、どうしようもなく感動したんだ。
吟遊詩人の滞在中、僕は彼に頼んでリュートの弾き方を教わった。授業は牛を放している間だけ、しかも妹からは目が放せなかったけど、僕は熱心な生徒だったし、彼は根気よく丁寧に教えてくれたから、みるみる上達した。
別れはあっさりやってきた。
再び旅立つ日が来て、彼は僕の家にやってきた。僕は水を汲みに出ていてその場にいなかったので、彼は家にいた母さんと下の兄さんにある物を預け、そのまま旅立っていった。
戻ってきた僕に、母さんは「これを頂いたわよ」と使い古したリュートを渡しただけだった。
母さんはきっと、僕がすぐに彼や音楽のことを忘れてしまうと思ってたんだろうね。
☆
それから一年経った。
僕の音楽への情熱は冷めなかった。
仕事の合間に練習を重ねたリュートの腕は、誰にも師事していない者にしてはなかなかのもので、村でお祝い事やお祭りがあれば必ず駆り出されるほどになってたんだよ。「うちの村のちっちゃな楽士」なんて呼ばれてね。おかしいだろ?
十三歳になっていたモント兄さんは、やがて隣町の鍛冶屋に奉公に出ることが決まった。
家を出る前の日の夜、ベッドの中で、兄さんは僕に聞いた。
「なあ、お前、吟遊詩人とか楽士になるつもりか?」
「なんだよ、急に。いくら好きでも、前にちょっと弾き方教わったくらいじゃ、そんないいモンになれっこないよ」
その頃には、僕は僕が進むべき道を知っていた。兄さんと同じように、あと二年ほどすればどこか奉公に出されるんだ、とね。趣味で弾かせてもらう時間があればいいけど、と願うばかりだった。
「じゃあ何で毎日あんなに弾いてんだ」
「弾くのが好きだからだよ。ただそれだけ」
「ふうん」
兄さんは寝返りを打って僕に背を向けた。
「それじゃ、ダメだな」
「何がだよ」
「何でもないよ。もう寝ろ」
ちょっと腹が立って、僕も兄さんに背を向けた。
「何だよ、もう」
「いいから寝ろって」
☆
さらに一年が過ぎ、モント兄さんは数日の休みを貰って奉公先から帰ってきた。
腕や肩には筋肉がついて、こころなしかがっしりしたように見えた。
「鉄やら薪やら水やら運ぶばっかりで、まだ何にも作らせてもらえない」
そう言いつつも、兄さんは兄さんなりに鍛冶屋の仕事を気に入ったみたいだった。鎚の音や飛び散る火花がどんなに綺麗か、親方の作る道具がどんなに素晴らしい出来かを熱心に語り、いずれあんな職人になりたいと目を輝かせる兄さんを、僕は内心羨ましく思った。
僕はこんな風に奉公先を気に入ることができるだろうか。
少なくとも、兄さんの話を聞く限り、リュートを弾く時間はなさそうだった。
その夜、いつものようにリュートの手入れをしていると、兄さんが一曲弾いてくれと言ってきた。
「なんだよ、前はうるさいって怒ってたくせに」
「たまにお前の下手くそな音楽でも聞かないと、調子狂うんだよ」
「聞いても聞かなくても狂いっぱなしじゃないか」
「けっ、言ってろよ。ほら、弾け弾け」
ベッドの上であぐらをかいてニヤニヤ笑っている兄さんは、以前と変わらないように見えて、やっぱりどこか大人びて見えた。
就寝前だからと静かな曲を選んで弾き始めた。驚いたことに、兄さんは笑いを納めて神妙な顔で聴き入っていた。弾き終わると、満面の笑みで言った。
「よし。じゃあ、寝るか」
さっぱりわけがわからなかった。
☆
それから数ヶ月が過ぎたある夜、僕は父さんに寝る前に大事な話があると言われた。
ぴんと来た。きっと僕の奉公先に関することだ。
妹が眠ってから、家族四人でテーブルを囲んだ。
僕はとても緊張してた。みんな押し黙ったままで、暖炉の火がぱちぱち爆ぜる音だけがしばらく室内に響いてた。父さんの組み合わされた手がきつすぎて、指先が白くなってたことをやたらと覚えてる。
「お前を奉公に出すか、随分悩んだよ」
ようやく重い口を開いた父さんは、意外なことを言った。
「二年前に村に来た吟遊詩人を覚えているな」
僕はこくりと頷いた。一日たりとも彼のことを忘れたことはなかった。
父さんが母さんを見た。母さんは、エプロンのポケットから封筒を取り出して僕に見せた。
「あの人が、あんたに目をかけてくれてね。あの人が旅立つ時に、お師匠さんへの紹介状を書いてくれてたんだ。この間、そのお師匠さんに手紙を送ってみた。これはそのお返事だよ。読んでごらん」
促されるまま、僕は手紙を開いて読み始めた。
前略 |
手紙には難しい言葉がたくさん並んでたけど、おおまかな意味は読み取れた。
僕は思わず顔を上げた。
父さんも母さんも兄さんも微笑んでいた。
「お前は元々手先が器用だから、どこへ奉公に行ってもいっぱしの職人になれると思う。でもな、父さん達も、お前のリュートがどれだけ上手で、お前がどれだけ音楽を愛しているかわかってるつもりだよ。お前さえその気なら、この方のところで本格的に音楽をやってみてもいいと思ってるんだ」
夢みたいな父さんの言葉に、僕は頭が真っ白になって、ただただ目の前の手紙を凝視してた。
そのうち、行きたいって気持ちと、行っちゃダメだって気持ちがぐるぐる渦巻き始めた。
決して楽な生活じゃなかったからね。なにしろ、ここらで何かを教わるには莫大な費用が必要で、だから僕らは学校にも通ってなかったくらいなんだ。
……家族が飢え死にしちゃうかもしれないのに、僕だけがのんきに音楽を教わりに行っていいわけない。
僕は歯を食いしばった。
「ダメだよ……だって、お金……すっごくかかるんでしょう?」
やっとのことで小さな涙声を絞り出した僕を、席を立った母さんの温かい腕が包んでくれた。
「続きを読んでごらん」
でも、僕の目は涙でいっぱいになってて、とても続きを読めそうになかったから、兄さんが代わりに読んでくれた。
――費用については、憂慮されるに及びません。と申しますのは、私は少々足が不自由でありまして、ご子息には我が家に住み込みで入っていただき、身の回りの細々した手伝いをお願いしたいのでございます。 |
「ほら、このくらいならうちにも払えるよ。あんたが心配することは何にもないんだ」
母さんもまた、目に涙を溜めて僕を抱き締めていた。
「父さんも母さんも俺も、初めはそんな金もないし、奉公に出た方がお前のためになると思ってたんだけどね。この前モントが帰ってきた時『あいつは音楽の道に進ませた方がいい、絶対に立派な楽士になるから』って一生懸命俺達を説得したんだ。自分の給料を仕送りしたっていいって、そこまで言ってね。あいつ、一番うるさがってたくせに、今じゃ一番お前のリュートが大好きなんだぜ。もちろん、俺達もお前のリュートが好きだけどな」
兄さんの大きな手が伸びてきて、僕の頭を撫でた。
「うちのちっちゃな楽士さん、本物の楽士になりたいかい?」
父さんの優しいからかいに、くしゃくしゃに泣きながら、僕は母さんの腕の中で何度も頷いた。
こうして、僕の弟子入りが決まった。
☆
その時の僕にはわからなかったんだけど、師匠が提示した授業料は本当に破格だった。なんと、僕が家族と暮らすのに必要な費用とほとんど変わらなかったんだ。いくら身体が不自由で手伝いを欲してたからと言って、宮廷楽士を務めたほどの人が、この程度の額で弟子にしてくれるはずがない。
後になって、師匠に聞いてみたことがある。
会ったこともない僕を、どうしてそこまでして弟子にしてくれたのか、って。
「あらかじめ、あいつから聞いとったんだ。お前のことをね。あいつが気に入ったんなら、私が気に入らんわけがない」
あいつ、というのは、もちろん兄弟子にあたるあの吟遊詩人のことだ。
「それにしたって、破格ですよね。ほとんどタダじゃないですか」
と言うと、師匠はフンと鼻を鳴らした。
「くだらん貴族どもの、口ばかりご立派なろくでもないガキ共を適当にあしらって、散々搾り取ってやっとるんだ。たまには慈善事業も必要だろう? 世の中はな、バランスってもんが大切なんだ」
慈善事業と言われて怒っていいのか笑っていいのかわからなかった僕に、師匠は茶目っ気たっぷりにウィンクしてみせた。
「ま、おかげで最後の弟子は大当たりだったわけだがね。神様は私のやり方に大賛成だったってことだな」
僕も、本当に幸運だったなってしみじみ思った。
それにしても、全く、師匠はとんでもないユーモアの持ち主だったよ。
おっと、長くなっちゃったね。
今日はここまでにしておこうか。続きはまた今度ね。
王子属性がある……かもしれない、らしい。
メインストリームはG2完了、覚醒したての新米パラ。
所属ギルドは「UMThunder」。
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